ISOも知らない人たちがいるようなので

LCA(ライフサイクルアセスメント)の評価方法について大きな誤解をされている方がいるようなので
ISO 14040/14044の規格に沿って正確な構造を整理しておこうか

まず、上でも言ったがLCAにおける環境負荷は「生産量1g(または1kg)当たり〇〇」というような単一の数値(スカラー値)として表現することはできない

理由は大きく分けて以下の3点

1. LCAの出力は「多次元の指標(ベクトル)」であること
ISOに基づくLCAの影響評価(LCIA)では、以下のような異なる複数の環境領域を個別評価
気候変動(CO2換算量)
人体毒性・生態系毒性(有害化学物質・重金属)
放射性物質リスク(ウラン・トリウム等)
水質汚濁・酸化・富栄養化
資源枯渇・地表改変(土地利用)
これらは単位も評価軸も異なるため、1つの数字にまとめることは客観的に不可能
「CO2排出量」という単一の数字だけを見て「LCAの評価」と呼ぶのは、LCAの全体像を著しく見誤っている

2. 「単なる重量(1g)」ではなく「機能単位(Functional Unit)」で比較すること
LCAでは「泥や鉱石を1g掘り出す負荷」ではなく、「最終製品(高純度磁石等)として
利用可能な純度まで精錬・無害化処理されて社会に供給されるまでのトータル負荷」を「機能単位」として設定する

陸上鉱山(特に中国式)は、掘削自体は容易であっても、精錬プロセスで強力な酸を使用し、
ウランやトリウムなどの放射性廃棄物を含む膨大な汚泥(テールポンド)を発生させる
一方、南鳥島のレアアース泥はアパタイト由来で放射性物質をほぼ含まず、マイルドな希塩酸で抽出が可能

「製品化・無害化までに生じるすべての影響」を正しく評価機能単位に組み込んだ場合、単に採掘段階の数値だけを比較しても意味をなさない

3. 「システム境界(評価範囲)」の設定と不経済の内部化
中国産のデータが過去に低く見えていたのは、環境汚染や毒性廃棄物の処理コストを評価の「システム境界」の外側に放り出し、外部化(無視)していたから
現在、EUのCRMA(重要原材料法)など国際社会が求めているのは、
こうした環境・人権負荷を正しく組み込んだ(内部化した)「真のLCA」

「1g当たりの単一の数字を出せ」という主張は、LCAの根本である「多基準評価」「機能単位」「システム境界」の定義を無視した論暴な単純化に過ぎない

客観的な国際標準(ISO)のロジックに基づいて議論してほしい